薔薇さうび正に開き、春酒しゆんしゆ初めて熟す。因よりて劉十九・張大・崔二十四を招きて同ともに飲む

甕のほとりの竹の葉が緑を増したように、甕の中の酒は春を経て熟し、階きざはしのもとの薔薇は夏に入って開いた。花は火に似て浅く深く紅に燃え、棚を圧するように咲いている。酒は飴のように濃厚な風味で、その緑は甕を溢れ台に粘り付いている。試みに詩句…

薔薇正に開き 春酒初めて熟す 因って劉十九・張大夫・崔二十四を招きて同じく飲む

甕頭(おうとう)の竹葉(ちくよう) 春を経て熟し 階底(かいてい)の薔薇(しょうび) 夏に入りて開く 火に似て浅深(せんしん) 紅(こう) 架(か)を圧し 餳(あめ)の如き気味(きみ) 緑(りょく) 台に粘(ねん)す 試みに 詩句を将(もっ)て相(あい)招去(しょうきょ)せば …

薔薇正開、春酒初熟。因招劉十九・張大・崔二十四同飮

甕頭竹葉經春熟 階底薔薇入夏開 似火淺深紅壓架 如餳氣味綠粘台 試將詩句相招去 儻有風情或可來 明日早花應更好 心期同醉卯時盃

雪のいと高う降りたるを

雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子参りて、炭櫃に火おこして、物語などして集り候ふに、「少納言よ、香炉峰の雪、いかならむ」と、仰せらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせ給ふ。人々も、「さることは知り、歌などにさへ歌へど…

香炉峰下 新たに山居を卜し草堂初めて成り 偶東壁に題す

日高く睡り足るも猶お起くるに慵(ものう)し 小閣に衾(ふすま)を重ねて寒さを怕(おそ)れず 遺愛寺の鐘は枕を欹(そばだ)てて聴き 香炉峰の雪は簾を撥(かか)げて看る 匡廬(きょうろ)は便ち是れ名を逃のがるるの地 司馬は仍(な)お老を送るの官たり…

香炉峰下新卜山居 草堂初成偶題東壁

日 高 睡 足 猶 慵 起 小 閣 重 衾 不 怕 寒 遺 愛 寺 鐘 欹 枕 聴 香 炉 峰 雪 撥 簾 看 匡 廬 便 是 逃 名 地 司 馬 仍 為 送 老 官 心 泰 身 寧 是 帰 処 故 郷 可 獨 在 長 安