薔薇さうび正に開き、春酒しゆんしゆ初めて熟す。因よりて劉十九・張大・崔二十四を招きて同ともに飲む
甕のほとりの竹の葉が緑を増したように、甕の中の酒は春を経て熟し、
花は火に似て浅く深く紅に燃え、棚を圧するように咲いている。
酒は飴のように濃厚な風味で、その緑は甕を溢れ台に粘り付いている。
試みに詩句で以て客を招待してみよう。
もし情趣深ければ、あるいは訪ねてくれる人もあろう。
明朝の花は今日より更に美しいに違いない。
願わくば、共に朝酒の盃を交わし酔わんことを。
薔薇正に開き 春酒初めて熟す 因って劉十九・張大夫・崔二十四を招きて同じく飲む
甕頭(おうとう)の竹葉(ちくよう) 春を経て熟し
階底(かいてい)の薔薇(しょうび) 夏に入りて開く
火に似て浅深(せんしん) 紅(こう) 架(か)を圧し
餳(あめ)の如き気味(きみ) 緑(りょく) 台に粘(ねん)す
試みに 詩句を将(もっ)て相(あい)招去(しょうきょ)せば
儻(も)し風情(ふぜい)有らば 或いは来たる可し
明日 早花(そうか) 応(まさ)に更に好(よ)かるべき
心に期す 同じく卯時(ぼうじ)の杯(はい)に酔わんことを